今年も「なんとかフェス」がやって来る!



今年も「なんとかフェス」がやって来る!
二木信

 『TOKYO なんとか』の読者であれば、もうすでに知っている方も多いと思うが、今年も「なんとかフェス」が開催される。日程は8 月20 ~ 22日の3 日間を予定している。会場は去年と同じく、長野県安茂里市にある通称「ジローズビッグマウンテン」だ。
 「なんとかフェスティヴァル」を簡潔に言えば、「夏祭り+レイヴ+ブロック・パーティ+なんとか∞」である。フェス・ブームと言われるこのご時世に、「なんとかフェス」ほどいろんな要素を贅沢に楽しめてしまうフェスはおそらく日本全国探してもないだろう。しかも、すべて自前でやるので煩わしいルールや時間に縛られることもなく、本当にのびのびやれる。さらに、「ジローズビッグマウンテン」という最高に自由度の高い山は町のすぐ近くにあるので、いざとなれば町に出て温泉に浸かることもできるし、思う存分自然の中で「うまい空気でも吸いながら昼寝でもしようか」とダラダラと時を忘れてくつろぐこともできる。夜になれば、満天の星空の下、焚き火に当たりながらロマンチックなムードに身を委ねられる。まあ、「なんとかフェス」に行けば、今年の夏は他にどこにも行かなくていいんじゃないだろうか、そう思えるぐらい、盛りだくさんのフェスティヴァルということだ。
 今年もすでにライヴ、DJ、映画上映、バーベキュー部隊(通称「メタル・バーベキュー」)参戦、任侠演劇、トークショーと続々とその中身が決まりつつある。去年より壮大でファンキーなフェスになることは間違いなさそうで、正直、去年参加した身としては一体全体どんなことになってしまうのかと、不安と期待が入り混じる複雑な心境でもある。で、こういうのはいろいろ案じていてもしょうがないし、当日ひょっこり行くよりも、じょじょにテンションを上げていく方が数百倍楽しめるだろうということで、気の早い連中が、6 月14、15 日に「ジローズビッグマウンテン」の下見と開墾という重要任務を果たすべく長野に行って来た。平日にも関わらず、あちらこちらから14人もの人(初対面同士の人もけっこういた。謎のつながり恐るべし!)が集まり、案の定、思いっきり遊んで作業が進まなかった! いや、一応、去年は使われなかった秘密の奥地を開拓するという素晴らしい成果を上げた。それによって、今年は2 ステージ以上は組めるかもしれん。とはいえ、たんまりとイノシシ鍋を食べるわ、野球やサッカーをやるわ、夜は酒盛りに興じるわで、ホントに遊んだ。
 さて、これはどうしたものかと会議した結果、こんなに楽しいのであれば、現地で開墾作業&プレ・イヴェントをやっちまおう! という結論に至り、7 月後半にやることになった。全国各地の皆さん、まずは本番前のこれに来るしかないです。日程と詳細は追って、IRA のブログか、松本哉のブログか、素人の乱のHP で告知されるでしょう。さあ、これは楽しみだ。ということで、今度は休日に行こうね~。

超 DIY 謎のイベント「なんとかフェス」


「松本哉ののびのび大作戦」 15号 (09年9月2日)より
松本哉


 衆院選も終わり、悪の権化=自公政権もケチョンケチョンになり、ひとまずはめでたしめでたしっていうところだ。
 しかし! そんな歴史的な選挙の1週間ほど前、いったいなにが行われたかというと…。そう、かねてから目論まれていた長野作戦!! いや~、とんでもな かったね! こりゃ、民主党どころの騒ぎじゃないぞ。

 政治が盛り上がっている傍らで、我々は日々、仕事に行けば安い給料でコキ使われ、日常生活では「あれを買え、これを買え」と、やたらと金を使わされ、散 々金を巻き上げられる。で、たまには遊びに行こうかと思ってみると、各種の遊び場やイベントに金もうけ連中が入り込んでいて、これまた金をふんだくられ る。職場でも日常でも金を取られ、遊びですら金を使わされる。おまけにその、金を使った遊びですら、「明日の労働の糧」にされてしまうという、まさにボッ タクリ経済もはなはだしい世の中。まったく、冗談じゃねえ!!
 …という、そんなくだらない社会に対抗して、タダ同然で遊んでしまおうという強力なイベントが、その長野作戦「なんとかフェス2009」だ。長野の話は この連載でも何度も登場しているので、ご存知かもしれないが、要するにたまたま知り合ったリサイクル屋のオッサンのウラ山でやるイベント。ということで、 その会場には、まさに何もなかった!! 水道もなければ、トイレもない。店もなければ、そもそもそこへ行くための交通手段すらない。まさに、勝手にやるイ ベント!
 それを、半月ほど前から準備の先発隊が現地に行って、草を刈ったり、ステージを作ったりして何とか会場を作り、イベントに備えた。しかし、その「なんと かフェス2009」が行われるのは8月21~24日と、3泊4日。大丈夫なのか?

ジローズビッグマウンテン。なかなか広い。


【与作事件勃発】
 さて、フェス初日。イベントが始まる時間になったのだが、いまいちまだ人の集まりが悪い。しまった、さすがに山奥過ぎたか? それとも告知の地図がいい 加減すぎたのか??
 とりあえず景気づけにDJがレコードをかけ始めてみるが、その会場のジローズビッグマウンテンのボス=ジローさんが、すかさず「おい、これを頼む」と1 枚のレコードをDJに渡した。北島三郎の「与作」だ! そして、ジローさんはイスを持ってきてスピーカーの前に設置し、ゆったりと座る。超特等席だ! し かもマンツーマンなので、DJも与作をかけざるを得ない! そして、DJはそっとレコードに針を落とす。夕暮れ時の山には「与作は木~を~きる~ ヘイヘ イホ~ ヘイヘイホ~」と爆音で流れる! おいおい、なんだこれは! フェスの初日だぞ!! そんなことをするために2ヶ月も準備してきたのか!?

【狂乱の4日間が開始!】
 しょっぱなの与作事件で一瞬ひるんだものの、その後はいきなり大盛況だった。適当な地図で告知したにもかかわらず、どいつもこいつもテントや食料を持っ て山に登ってきて、なんだかよくわからないうちに100人ほどが集まった。しかも、東京から来た人も多かったが、関西や富山、もちろん地元長野からもとん でもない奴らが続々と登場した! で、祭りが始まってしまえば、もう、あれよあれよと、連日、大騒動のままイベントが延々と続く。バンドやDJが20組弱 出演して盛り上がりつつ、「祭りとは何か」というテーマのトークセッションもあり、映像もあり、火も煙もあり、「祭」は続いた!
 さらには、かまどを作って共同で自炊をしたり、その辺に落ちているもので妙なものを作り出す奴がいたりと、好き勝手にやっていた。ドサクサにまぎれて、 床屋とかマッサージ屋、カフェの露店を出す人がいたり、本やCD、Tシャツを売る人もいたりもした。まあ、イベント内容に関しては、この紙面じゃ語りきれ ないところもあるので、また別の機会にでも紹介するとして、とりあえず、今日のところは写真で雰囲気を見てみてもらうよりない。まあ、すごいことになって いた。

かまどを作って自炊。なかなか豪華な食生活だった!


【ステテコ事件勃発!】
 当然、近隣住民にも衝撃は走った! 普段はあまりに人のいない長野の山に、若い奴らが集まってきてるのに触発されたのか、その山の入り口にある自動車の 板金工場の社長も、ステテコ姿のままカミサンを連れて飛んで来た! なんか文句でも言いに来たのかと思ったら、まったく逆! 「やっぱり、若い奴らはこれ ぐらい賑やかにやらなきゃいかん!」などと、大喜びだった。あまりに絶賛していたので「一言、挨拶お願いしますよ」と頼むと、「いや! この姿じゃ人前に は出られないからダメだ!」と、木の陰から出てこずに帰ってしまった。あれ、残念! …と思ったら、翌日、今度はちゃんとした服でやって来て、差し入れな んかも持ってきた。「いよっ、ステテコ社長!」の聴衆からの掛け声とともにステージに立ち、「ジローさんと必死になってこの山を切り開いてよかった! 今 回だけではなく、毎年、大いにやってください!!」と、大げさすぎるほどの大演説! ありがとう、ステテコ社長!
 一方、なんだなんだとビックリするおじいさんもいた。山に散歩にでも来たのかフェスをみかけ、訝しがるが、「山でなにやってんだ? ジローんとこか。 まったくしょうがねえな~」と言って帰っていった。さすが、田舎。全員が知り合いだ!

ステージ付近では、常にマヌケなやつらが騒ぎ続ける。


 まあ、そんな感じで、4日間、特に問題もなく祭は終わった。いやいや、よかったよかった!
 しかし、やっぱり、祭の醍醐味はやっぱり自分らの手でやることだ。その手を離れて、誰かにゆだねると一瞬で祭はつまらなくなる。これはもう、金もうけと 化したしょうもないイベントなんかに行って祭を消費してる場合じゃないね!
 ついでだから、もう一言。
 こういうくだらない世の中だから、反乱は起こしたくなる。だが、デモや集会をやったり、立て篭もってみたり、なだれ込んでみたり、警官を殴ってみた り、っていうことばっかりに追われてしまっては本当の力にはならない。なんでも金を巻き上げようとするボッタクリ経済に巻き込まれないような日常生活だっ たり遊びだったりを、自分らで勝手にやってしまえば、もう怖いものはない。
 金もうけ連中の世話や餌食にならなくて済むような生活と祭!
 う~ん、これはやはり、ステテコ社長の言う通り「なんとかフェス2010」をやるしかないか!

巨大スクリーンに映像が流されたり、花火が焚かれたりと、何 が起こるかわからないフェス!

イルコモンズのなんとか原稿


イルコモンズのふた。」より

イルコモンズ

 4泊5日の「なんとかフェスティヴァル2009」からもどってきたら、気のせいか、もの がよくみえ、耳がよくなってた。気のせいでなければ、あたまもすこしよくなった気がする。どうやら感覚がひらいたらしい。じっくりものをみたり、じっと耳 をすましたり、しっかりものを考えるようになった。こどものころ、キャンプから帰ると、「なんだか、たくましくなって帰ってきたね」と、よくそう云われた もので、なるほどそれに似たところもあるが、すこしちがう気もする。おそらくそれは、日ごろ、聞きたくもない音楽や見たくもない広告、知りたくもない ニュースや食べたくもないメニューであふれた、アシッドな資本主義の世界で、あたまを狂わさずにサヴァイヴしてゆくため、知らず知らずのうちにOFFにし ていた感覚がオープンになり、リヴァイヴしたのだと思う。つまり「サヴァイヴ&アライヴ」の「なんとかフェスティヴァル」は、「リヴァイヴ」のフェスでも あったわけだが、それ以上にまずは「アライヴ」のフェスだったと思う。なにを「生きた」かといえば、もちろん「革命後の世界の暮らし」であり、「金もうけ 連中の世話や餌食にならなくて済む生活」であり、「エコ=ECO=END CAPITALISM ORGANICALY=有機的に資本主義を終結させる)」な生活である。それは、朝起きてから朝寝るまで、ひっきりなしに誰かがドラムやギターを鳴らして いたり、昼間からなにもせずただぶらぶらしてたり、夜中に酔っぱらって地面で眠りこんでたりしても、まぁ「なんとか」なってゆく暮らしであり、「なんと か」なりそうにない場面になればなるほど、みんなでよってたかって「なんとか」してしまう、たくましい生活である。そんな「なんとか」ライフをアライヴし たのだから、このフェスに参加した100人はさぞかしみんなたくましくなって帰ったのではないかと思う。。。という、この作文も実は、「こまった、こまっ た。「TOKYO
なんとか」10月号に載せてもいい原稿とかないでしょうか?」というIRAの成田くんからのSOSメールをみて書いた「なんとか 原稿」だったりする。成田くん、これで「なんとか」なるかな?
 
 それはさておき、こないだ、この「なんとかフェス」をドキュメントした 映画「なんとかフェス・ざ・ムービー」をみた。その、とにかく、うるさくて、やかましくて、みてると、また感覚がひらいてしまいそうになる映画をみながら 思ったのは、「世界がもし100人の村だったら」ではなく、「世界がもしこんな100人の村だったら」ということである。映画はまだ未完成だけど、完成後 の映画の宣伝コピーを先につくったので、この「なんとか原稿」のおまけにつけておきます。
 
「この映画は「革命後の世界」を先につくって 生きてしまった「百人一揆」の記録である。
「もうひとつの世界」は可能なだけでなく、もうとっくに生きられはじめている。
見よ、呆れよ、 そして、おもしろければ、来年、参加したまえ。これが「革命後の世界の暮らし」だ!」


【名称】 「イルコモンズのなんとか原稿」 ブログ版
【分類】 オープンソース・コンテンツ
【仕様】 「TOKYOなんとか」10月号掲載版をソースにコンテンツを改変。
【帰属】 排他的・独占的コピーライトなし
「クリエイティヴコモン ズ・ライセンス 表示-非営利 2.1 日本」対応
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この作品は、ク リエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
【備考】 文章の改変・翻訳・リミックス推奨

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